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ロング・インターバル [読書]

死ぬまでに(大げさ)、全作読んでおきたいと思っている作家が何人かいます。

将来隠居したときには、そうした作家の作品を、読んだものも含めて全集で一から読みきりたい!とか思っているのですが、まあ、読みたければ今から読め、どうせ読むのが遅くて間に合わないんだから。

普段から読むスピードは遅くて、書店で働くものとしてあるまじき感じだったりするのですが、遅いというよりも集中力が続かなくて、一日の読書時間がものすごく短いというのが情けない。

それでも昔はもっと集中して読めていたし、気付くともうすぐ朝なんていうこともあったのに。今ではもう夜なんて、読み始めて10分で眠くなる始末。

あと、なかなか読み進まなくて、気持ちも乗らなくて、でももう読むのやめよう!ってことにもならなくてしばらく放置、で少し合間をあけてから続きを読んだりすると意外と一気にラストまでいけたりするということもある。

そうやって最近やっと読み終わったのが、フォークナーの『死の床に横たわりて』(講談社文芸文庫)。

死の床に横たわりて (講談社文芸文庫)

死の床に横たわりて (講談社文芸文庫)

  • 作者: ウィリアム フォークナー
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2000/12
  • メディア: 文庫


これは結局どのくらいかかっただろうか、半年くらいだろうか。その間ずっと鞄に入れておくものだから、鞄を開けるたびになんか後ろめたくなってきて、そのうちそれさえも麻痺してしまってほんとなんだかなあ。

でもすごく読み応えはあって、諦めずに読み通した甲斐があったというもの。

フォークナーはすごく好きで、一生かけて全作読みたいと思っている作家の一人なのだけれど、よく古そうとか固そうと思われてしまうことが多いようで残念です。

確かに作品が書かれたのが1920年代から50年代にかけて、日本で言ったら昭和初期から30年代くらい。その時代のアメリカ南部が舞台で、白人と黒人の関係性などがモチーフになっていることが多いから、今の時代の感覚からするととっつきにくいかも。

でも読んでみると、今の時代にも通じる人間の本質を鮮やかに描いていたり、自分の痛いところ、見たくない嫌なところを見せつけられている気分になったりして、ああ、えぐられるなあという感じなのが好きです。

それと、かなり実験的というか、構成が複雑だったりするので、それを読み解くような読み方をするのも楽しいです。

この『死の床に横たわりて』は、架空のアメリカの郡“ヨクナパトーファ”を舞台にしたヨクナパトーファ・サーガのひとつ。といっても、サーガの中心人物である人々は出てこず、ヨクナパトーファ出身のアディとその家族であるバンドレン一家を中心にした物語。アディが死ぬところから始まり、その“死んだら遺体を故郷に埋めてほしい”という遺言を守るために、バンドレン一家が喜劇的なまでに右往左往するというのがメインストーリー。

物語の視点が、家族だけでなく15人ほどの登場人物を次々と移動していき、さまざま観点で出来事が語られていて、それによって全体が見えてくる。時には人によって言っていることが食い違うというような矛盾も見えてきたりして、そこが楽しみどころだった。

やはりまず、サーガは全作読まなくては。
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