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今年の初読書(遅い!) [読書]




舞台は近未来の世界。

震災後、日本は鎖国を続け、閉ざされた世界で生きる人々。老人は死ぬことができず、子供は生き続けることが難しいほどにひ弱となった、未来のない世界。

そんななか少年無名が“献灯使”に選ばれ、未来を託され海外に旅立つことになるのですが…。

普通ならこれで少しは希望のあるようなストーリーになりそうですが、なんだか明るさが感じられず、かといって全くの暗闇でもなくといった微妙なテイストの作品となっており、それが不安感やなんとも言えない嫌〜な感情を呼び起こされました。

作者の多和田葉子さんは好きな作家の一人で、特にここ最近の作品はよく読んでいたのですが、それらとはまた一線を画す作風だなあというのが第一印象。

ずいぶん直球に、震災後の世界や人々のあり方に対するメッセージを投げかけてきているように思います。

早くも震災について忘れかけている自分に、まだ何も終わっていないよと言われたような気がしました。

短編集で、収録されている5作品ともに震災後の世界が舞台となっています。登場人物も舞台もどれも違うけれど、それぞれの立場から見た震災後の世界を描き出しています。

なかでも印象的だったのは『不死の島』という作品。

外国から見た震災後の日本てこうなのかと思わさせられて、近すぎて逆に慣らされて鈍感になって、ま、しょうがないかと諦めてしまっている自分に対する強いメッセージのようでした。
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