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先入観で損をしていた [読書]

7月に芥川賞が発表されてからはや2ヶ月。

あー読まなきゃなーと思いながらも、だらだらと読まずにきてしまったのですが。

実は、書店で働く身としては恥ずべきことですが、受賞作家柴崎友香さんの作品は今まで一度も読んだことがなかったのですよ。なんとなく、自分が苦手とするタイプの作品を書く作家なんじゃないかなーと勝手に思い込んでいたからです。

友人に、書店で働いているのに柴崎友香も読んだことないなんてやばいんじゃない?という突き刺さる言葉をいただき、ついに重い腰を上げてみました。

『青空感傷ツアー』





受賞作、もしくはここのところのノッテいる作品を読めばいいものの、なぜか10年も前のデビュー直後の作品を選んだのは、そうまさに、このあたりの書籍を書店で見かけた際、たぶん違う、これは自分向きじゃあない、と思い込んでそのまま今日まできたからか。

で、読んでみて、とても良かった。驚いた。

冷静になって作品を見返してみると、出てくる人たちはどれも好きなタイプではないし、自分と重ねて感情移入できるタイプでもない。そして何といっても、こうした現実感があるようでいて実は全く現実感がなく、ふわふわ浮いているような印象を受ける作品は全く好みではない。

それでもなぜだか心にしんみり来たというか、すっと心の奥の部分をなでられて引っ張られていくような感じをうけて、しみじみとした気分になった。

想像と違うぞ、柴崎友香。ということで読んでみた。

芥川賞受賞作『春の庭』





ああ、何というか少し外文風というか。デビュー直後のテイストは残しつつ、なんかすごく進化しているなあなんて、今まで一度も読んだことなかったくせに偉そうに思う。

地に足がついているようでいて、浮き足立っている感じもして、現実的で卑近な感じでいて、どことなくファンタジックで。読み進めながらどんどん予想を裏切られていくようで楽しかった。

そして何より、なんだこの視点の定まらなさは。誰の視点で書いているのか読みながら絶妙に移り変わっていくさまがとても面白かった。

今回読んでみて、あー今まで10年くらい先入観で損していたなーという、そういう話です。
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